KREVA “国民的行事”
大切なことは何度でも言う! スキャンダルで文化を潰す国、日本! 過去に失敗した行動や汚点となった作品をどこからか拾い上げてきて、再起を不能にさせるほどの永遠の汚名に仕立て上げる仕打ち、こんなことして何が楽しいのか? 誰が満足するのか? こんなことをあなたは容認するのですか!?
小林賢太郎さんは、元々はお笑いコンビ「ラーメンズ」のメンバーであり、現在は表舞台を引退され劇作家・演出家として活動、昨日まで東京オリンピック・パラリンピック開会式閉会式の事実上のトップ(ショークリエイター)としてその責務を担っておられました。ところが、20年前にラーメンズのコントとして披露したネタに第2次世界大戦におけるユダヤ人に対するホロコースト(大虐殺)を揶揄するようなものがあったとクレームが入り、昨日突然の解任が発表されました。
私、その内容を見た記憶があります。2000年代当時に長崎の「チトセピアホール」で毎年のようにラーメンズのお二人が公演を行われており、何度も観に行きました。今でいう「腹筋崩壊」というやつです。死ぬほど笑いました! お二人に非常に興味をもちビデオを借りて過去の公演を見ました。おそらくその中でこのネタを見ていたのです。記憶が定かではありませんが、そのネタの内容は「ホロコースト」の揶揄というより、NHKの教育番組「できるかな」の揶揄がメインで、今でいう「ブラックな」ノッポさんとゴン太くんが、「そんなことして大丈夫か?」という破天荒なことをやらかすネタだったように思います。当時ラーメンズはすさまじい演技力を持つ異色のコント芸人としてすでに注目を集めていましたが、まだスターダムへと駆け上がってゆく途中のお立場であったはずです。より売れるため、より有名になるために、必死に毎日一生懸命に社会を風刺し揶揄するネタを書いていたのではないでしょうか。
その後お二人とも芸人というよりは俳優として活躍されるようになりました。相方の片桐仁さんは多数の映画やドラマに出演なさっており、興味の薄い方もその個性的な面持ちをご覧になったことがあることは多いと思います。小林さんはコマーシャルの俳優として出演されることが多く、最近なら「ゆうパック」のCMに出演されているのを見ました。昨年末に表舞台からの引退を表明され劇作や演出に専念することを決意されたのも、それだけの芸能界での定評と信頼があってのことだったのでしょう。長崎でブラックユーモアを披露されていたころとは、全く違ったお立場というものがあったはずです。
今回ラーメンズの過去のネタが拡散され、「ホロコーストを揶揄した」とする表現にユダヤ人の方々は強く不快感を覚えたはずです。それは我々日本人が原子爆弾を揶揄するような表現に強く不快感を覚えることと同様です。米国のユダヤ人の団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター」がクレームを出すのももっともですし、彼らの不快感に対しては、私も同じ日本人として申し訳なく思います。
しかし、スターダムを駆け上がった後になって、当時のお立場で書かれた過去の作品をやり玉にあげて糾弾し、特定の職務から引きずり下ろす、解任するやり方には強く違和感を覚えました。オリンピック・パラリンピックには崇高な理念があるのでしょう。なんとなくふわふわとしてて良く分かりませんが、その理念に合致しないとして、小林さんは解任となってしまいました。
間違っています。これは日本の文化に対して敬意のない、悪しき前例を作ってしまいました。今後文化芸能のスターダムを駆け上りたいと願い挑戦する人々は、その成功がかなったときに足元をすくわれぬよう気を付けなくてはなりません。常識や道徳、人道というものに疑問を持ったり、コンプライアンスのギリギリを攻めるようなネタを書いて表現することを控えなくてはならなくなりました。日本の演芸が衰退を迎えるひとつの転換点になってしまった可能性さえあると思います。
ここ数日様々なツイート・コメントを見て思いましたが、小林さんや小山田圭吾さんをバッシングする意見の特徴は、なんだかはっきりしないオリンピック・パラリンピックの「崇高な」理念を持ち出していることが多いと思います。「オリンピックの開閉会式を担当するクリエイターは過去にも清廉潔白でないといけない」という思考です。なんだか宗教染みています。その傘に隠れて優れた才能を持つ音楽家や劇作家を糾弾することは、単に日本の現代文化を貶めて軽蔑することと何も変わりがないことに気づけないのでしょうか?
昨日は「お笑い芸人にオリンピックを任せるからこんなことになった」というコメントを見ました。私は強く憤りを覚えましたが、そのコメントに押された多くのいいねボタン、これが今の日本人の、文化に対する尊敬、敬意の無さを示しているのだと思います。きっと今の日本は「お笑い芸人にオリンピックを任せるな」という多くの人間が、その一方でビートたけしさんの新作映画を観て、松本人志さんのワイドショーのコメントに一喜一憂し、M-1グランプリで新しい推しの漫才コンビを探しているのだと思います。すでに始まっているのでしょうが、このような状況には衰退の未来しかありません。
私はこれからも、クリエイターの個人的なスキャンダル・失敗などによって、その作品を封じ込めてゆくような風潮には断固として抗ってゆきます。それが文化というものに対する敬意だと考えるからです。私はこれからも小林賢太郎さんも小山田圭吾さんのお二人を支持し、できる限りの支援をさせていただきたく存じます。
今日は起床音楽でソロでは初めてのラッパー、「クレバ」さんです。小林さんと親交があり、MVで共演した楽曲、その名も「国民的行事」を流します。元々は愛知県で「愛・地球博」があった2005年のリリースになります。その後も長く親交があるようで、一昨年2019年には、私の大好きなライムスター宇多丸さんともコラボし、3人で楽曲を発表しておられます。曲名はその名も「それとこれとは話がべつ!」だそうですwww
私はオリンピック・パラリンピックの開催を支持し、その成功を祈っている一人として、今日という歴史的な一日をおもいっきり揶揄してやろうと思います! 今夜の開会式を楽しみにしていますよ! 負けるな! がんばれ!