起床音楽4月26日2635曲目

Uru “フィラメント”

先日、横尾初喜さんが監督を務められた話題作「おいしくて泣くとき」を映画館「ローソンユナイテッドシネマ長崎」で拝見してまいりました。序盤の図書館と雨に濡れる場面、それは主人公がヒロインに対して恋をするというメッセージに違いないのですが、本当に美しい方をより美しく、記憶に鮮明に残させるほどの美しいスローモーション撮影で表現されておられました。私を含め誰もが恋してしまいます。大変印象的でした。後から知ったのですが、主役を演じられた長尾謙杜さんはアイドルグループ「なにわ男子」のメンバーとのことです。紅白歌合戦出場歴もあるじゃないすかw ファンの方々には本当にたまらない映像だったと思います。途中までは本当に、若く美しいお二人が美しく輝く映画を羨望の眼差しで観させていただきました。夜食でいただくと確実に胃もたれる四十路ですが、「バターしょうゆ焼うどん」は本当に食べたくなりました。

しかし、この映画は「子ども食堂」とヒロインの不遇な家庭環境がテーマにあるストーリーです。最後まで映画をご覧になった多くの方々が「涙が止まらない」と仰っておられます。ところが私は正直に申しますと、途中から「仕事モード」に入らざるを得なくなり、ひたすら感傷を堪えながらストーリーの背景を考え続けることとなりました。見終わった後に感想と解説を書かないわけにはいかないという気持ちになりましたので、この後予告動画の下部にいわゆる「ネタバレ感想」として書いておきます。ご覧になった方々にはぜひご一読いただきたいです。

本日の起床音楽は出身地を公開されていないシンガーソングライター、「ウル」さんの、本映画主題歌です。清涼感のあるヴォイスが映画のエンディングを見事に締めます。ぜひお聴きください。長崎では本日以降は「TOHOシネマズ長崎(ココウォーク長崎)」でご覧になれます。ぜひご覧いただければと存じます。

Uru Official Website & Official Fanclub 「SABACAN」
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new digital single「フィラメント」2025.4.4 release
新曲「フィラメント」が映画『おいしくて泣くとき』の主題歌に決定!4月4日(金)にデジタルシングルとしてリリースする事が決定しました。映画『おいしくて泣くとき』は、作家・森沢明夫さんによる小説「おいしくて泣くとき」が原作。主人公・心也を演じる...
Uru - Wikipedia
映画『おいしくて泣くとき』大ヒット上映中
劇場映画初主演 長尾謙杜×當真あみ あの夏、僕は初めての恋をしたー。孤独な二人の初恋、友情、そして突然の別れ。30年の時を超えて明かされる彼女の秘密に、あなたもきっと涙する。
TOHOシネマズ 長崎| TOHOシネマズ
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ユナイテッド・シネマ長崎 | アミュプラザ長崎 | 映画館
話題の映画を楽しめる、全8スクリーンのシネコン、最新の洋画・邦画を取り揃えたラインナップをご用意しております。インターネットでチケットを楽々予約、お得なキャンペーンも多数あります。

(ネタバレ感想)精神科医の末席にいる者として、映画を観て考えた事を書かずにはいられなくなりました。児童虐待や荒廃した家庭環境に直面する現場の方々に対して僭越な気持ちもございますが、感じた事や考えた事を素直に記載したいと思います。事前に小説を読んでいたわけではありませんが、テーマが「子ども食堂」であったことから薄々覚悟をして観ることにはしていました。そしてその「覚悟」は当たってしまいました。ヒロインの「夕花」は血のつながりのない父親から理不尽な暴力・虐待を受け続け、SOSを発信することも出来ず恐怖に怯えます。そのシーン以降、私は「仕事モード」になってストーリーを理解し追ってゆくこととなりました。

「私、逃げたい、遠くに、、、。」ヒロインの言葉を真摯に受け止め彼女を守り抜くことを誓い行動した主人公「心也」でしたが、その彼の想いは虚しく警察に保護され、その後主人公は30年間「彼女を守れなかった」心の傷を負って生きてゆくことになります。おそらく観客の一部の方々は「なぜ自分から『逃げたい』と言っておきながら自ら警察に連絡したのか?」、「本来通報されるべきはクズ父親じゃないのか?」という疑問をお持ちになられたのではないかと思うんです。しかしこれは私個人の意見ですが、疑問を持たれるという事自体、児童虐待について理解を深められるチャンスでもあるのではないかと考えます。

映画から読み取れるのは、ヒロインの家庭環境はヒロイン、実母、養父とその実子である「弟」、という構成であったと思われますが、おそらくヒロインは幼少期から暴力や恐怖によって支配された家庭で育ってきたと想定されます。暴力を受け自分を否定されるような言葉を浴びながら育つと、それが「普通」となり、全て自分が悪くてそうなっているんだと深刻に自分を否定し、周囲に助けを求めるという事が出来なくなります。そして、明らかに荒廃し辛い環境であっても、その今ある「家族」の関係性が崩れてしまうことを極端に警戒するようになります。

高校1年生という年齢設定は絶妙です。自分の親が実はかなり社会から逸脱した存在であるのではないかと薄々気づきながらも、しかしあまりにも自己否定が強いため、SOSを出して良いのか分からないのです。報復の恐怖ももちろんですが、SOSを出した相手に自分のせいで迷惑をかけるに違いないのではという心理状態になります。ヒロインが主人公と共に逃げ出した場面はあまりにも急展開でしたから、「逃げたい」と言ったのは思わず出た本音です。そして最後自ら警察に連絡をとったのも、自分を「守る」と言ってくれた主人公に対し、「それには感謝するが私ごときのせいでこれ以上の迷惑をかけられない」、という心情です。

そして、映画で描くことは困難であったと思います(小説では触れているのかもしれません)が、ケースが養父と義娘の関係性であった場合、我々医療福祉関係者はしばしば、性加害、性的虐待がセットになっている可能性に注意を払います。主人公が抱擁しても直立しただ涙を流すだけのヒロインの様子、寝落ちした主人公の頬に不器用にキスをする場面には、その背景にある性的な外傷体験を読み取りました。最も悲痛な場面でした。

映画に登場しないヒロインの実母はきっと養父に危険を感じ取り、転校して別居する形でヒロインと共に安全な場所に避難していたのでしょう。ところが拉致を試みた邪悪な養父によってヒロインは深刻な頭部外傷を負い、「それまでの記憶をすべて失う」ことになります。30年後に主人公の店内に入るヒロインの動きはどこかぎこちなく、それはいわゆる高次脳機能障害を示しているのかもしれません(私の記憶が正しければ、ヒロインの娘も「建築士を目指して工務店を開いた」という言い回しをしており、本人が「建築士になった」とは言いませんでした)。

しかし、ヒロインの記憶喪失には「解離」という心の防衛があることも考えられます。悲惨な心の外傷体験を繰り返すと、それまでの全ての記憶とともに無意識の中へ「切り離して」しまうことで自分自身を守ろうとすることがあるのです。若いヒロインを演じた當真あみさんは左利き、30年後のヒロインを演じた尾野真千子さんは右利きでした。私はその表現に解離(解離性障害)の病態を感じ取らずにはいられませんでした。

「バター醤油焼きうどん」を食しながら、ぼやけた記憶が少しずつ蘇ってゆく映像、感嘆を覚えるほどの美しさでした。観客のほとんどの方々がその「ハッピーエンド」を感涙にむせび歓迎したはずです。しかし、水を差すようで申し訳ないのですが、私は次のように考えました。無意識の中から主人公の記憶が蘇るということは、同じくして養父の忌々しい記憶も呼び覚ますことになるのではないか、ということです。この後ストーリーが続くならば、きっと映画の序盤に登場したヒロインの「弟」との再会が待ち構えているでしょう。そして、その次に何が起こるでしょうか? 記憶や関係性を「回復」してゆくことが、果たして彼女にとって、本当に幸福だと言い切ることが出来るでしょうか、、、?

横尾初喜監督のインタビューを拝読しましたが、観客へのメッセージとして「広い意味での『愛』をテーマにしている作品ですので、今何かに悩んでいたり苦しんでいたりする方にこそ観ていただきたい」と述べられており、「何かを感じ取って考えてほしい」とは一言も仰っておられません。「仕事モード」で思索にふけり涙を流せなかった私は、結果としてひねくれ者なのでしょう。しかし、それ故に申し上げたいのですが、この映画は監督の想定を遥かに上回って、(私よりもずっと)児童虐待や荒廃した家庭環境に直面する現場の方々にとって見応えがあり、多くの示唆を感じ取り考えさせられる映画となったに違いありません。

多くの方々にこの映画をご覧いただき、虐待の憂き目に遭う子どもたちの心情と背景に耳を傾けていただきたいと思います。そしてこの映画を通じて、児童福祉の拡充、お近くの「こども食堂」の支援拡充に繋がってゆければ良いのではないかと考えます。

コラム/マリオンTimes/家族を超えた愛を描く 映画「おいしくて泣くとき」横尾初喜監督インタビュー-朝日マリオン・コム-
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長尾謙杜主演映画『おいしくて泣くとき』。横尾初喜監督が明かす愛と熱量に溢れた撮影現場(音楽と人) - Yahoo!ニュース
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