起床音楽3月14日

電気グルーヴ “Shangri-La”

私は精神科専門ではありますが、「依存症の専門家ではない」と思っているので、有名人が違法薬物で逮捕されるたびに巻き起こる報道や世間の糾弾に対して、違和感がありながらも黙って過ごしていました。でも、今回はもう我慢なりません。

30年にわたり日本のテクノシーンをけん引してきた電気グルーヴのメンバー、ピエール瀧さんが、コカインの使用の疑いで逮捕されました。俳優など多方面でジーニアスな活動を展開されていたこともあり、現代芸能の様々な分野において衝撃やダメージが大きいことはよく分かります。しかし、分かりやすいほど「手のひらを返した」新聞・テレビニュースのバッシング報道、SNSなどに並ぶ無理解や偏見に基づいた意見に私はもう辟易しました。このようなことを繰り返していては、依存症の苦しみから回復しようと努力されている方々の出鼻をくじき、社会から排除して孤立させてゆく以外の何物でもないのに。そんなことにも気づけない想像力なのでしょうね。

依存症の当事者で作る協会や依存症の専門家の先生方が共同となり、「薬物報道ガイドライン」を策定するよう提案しました。ぜひご一読ください。今回の報道においても、ほとんど守られていません。

ツイートやヤフーコメントには無理解の言葉が並びます。「厳罰に処して罪を償え」、「これだから芸能界は甘い」、「子供に説明できない」、「犯罪者は二度と公共のテレビに出てくるな」、「心が弱い」、、、。

違法薬物を一度でも使用した人は、悪い人ですか?  後先を考えられない心の弱い人ですか?  自分とは関係のない遠いところにいる人ですか? 

罪に問われるのが前提として、何を償うのでしょうか? 確かに今出演しているドラマの役者を交代せざるを得ないとなれば迷惑でしょうし、所属する芸能会社は謝罪せざるを得ないかもしれません。しかし、すでに完成して封切り間近だった映画や放送直前のテレビ番組の「お蔵入り」は必要ですか? 「お蔵入り」を支持する人は、ドラマや映画の中で彼を観たら「薬物でラリってる演技なんて観たくないよ」という理解ですか? 

それって、まさに、偏見じゃないですか?  昭和の時代に統合失調症やハンセン病の患者さんに向けられてきた偏見;スティグマが、今依存症に向けられているとしか言いようがありません。

すでにピエール瀧さんの出演していたゲームソフトが「販売自粛」となりました。これって何のためですか? いったい誰が得するのでしょうか? 社会的・常識的に振舞おうとして出した判断のつもりでしょうが、その前提は薬物依存に対する偏見であるということに、大きな会社でも気づけないのです。

学校で教わってきた「ダメ、ゼッタイ」の教育は、違法薬物を一度も使ったことが無い人の割合を増やすことに貢献しました。それはよかったことでしょう。しかしその反面、このスローガンは一度でも違法薬物に手を出してしまった人への差別・偏見・糾弾を大いに強めるものになってしまいました。それは不幸にも依存症に至ってしまった人に対してますます居場所をなくさせる結果となり、回復を阻害する要因となってしまいました。終焉を考えなくてはならない時に来ています。


薬物依存は高血圧症や糖尿病と同じような慢性疾患と考えるとわかりやすくなります。依存症から回復はしても「完治」というものではありません。渇望や離脱症状がありながらも耐えて、「今日も○○をしないで一日が終わってよかった」ということを一生続けてゆくことになります(○○=薬物、お酒、ギャンブルなど)。そのために専門家の指導や自助グループでの対話が大きな役割を果たすこともよく知られています。

今朝私は過激な発言をしているなと自覚しておりますが、それでもここまで読んでいただいてありがとうございます。その上で皆様にお願いがあります。これからピエール瀧さんはきっと治療に向き合われ、いつか必ずカムバックされるはずです。ミュージシャンとしての復帰は大変な回復過程を経てこそ成り立つものであり、再発(再使用)のリスクも当然あります。大変な苦難を乗り越えて復帰されるのですから、その暁には彼を温かく迎え、支援するべきではないでしょうか?

それはほかのアーティストにも言えることです。 薬物依存からカムバックした酒井法子さん。近日歌唱が久々にテレビ放送されるそうです。残念ながら批判のコメントが並んでいますが、これを温かく歓迎し支持する態度を持つことから、私たち一人ひとりの偏見の改善が始まるのではないかと考えます。これまでも多くのミュージシャンが薬物依存から回復され、素晴らしい曲をいくつも生み出していることはよくご存知ですよね。これからご一緒に、ピエール瀧さんを応援いたしませんか!?

さて、

今日は電気グルーヴの代表曲、「シャングリラ」です。1997年、もう22年も前の曲になるのですね。なにも知らないで聴くとヴォーカルはひとりのように感じますが、実はAメロはピエール瀧さん、サビは石野卓球さんです。本当に発声がよく似ています。メロディにはサンプリングした元ネタがあるのをご存知でしょうか? 元々はスペイン(アルゼンチン出身)のジャズピアニストの作品です。


私はこれまで本当に電気グルーヴが好きで、尊敬していました。それはこれからも永遠に変わることはございません。これからもピエール瀧さんを全力で応援させていただきます!!!!!

タイトルとURLをコピーしました