井上陽水・安全地帯 ”夏の終わりのハーモニー”
8月31日、夏休みの終わりの日に夏の終わりのハーモニーです。先日「FNS歌謡祭」という番組をちらっと見たとき、番組の終わりにジャニーズとかアイドルとかがみんなで歌っておられました。ずいぶん渋い選曲だなと思うとともに、6年前のことを思い出しました。
当時の勤め先で、私の隣の席に座られていたのは50代の男性の先輩でした。もちろん業務で様々なご指導を受けていたのですが、それ以外の会話もたくさんいたしました。長い時間話しました。非常に音楽に造詣が深く、70年代のジャパニーズロックなどを語りこんでいたら、勤務時間が終わるどころか知らぬうちに日が暮れてしまうこともありました。宴会などでカラオケに行くと、190センチ近い長身から繰り出される芯と艶のある歌声は、まさに井上陽水そのものでした。
私は4月の歓迎会でその先輩をお誘いし、先輩が井上陽水、私が玉置浩二のパートでこの曲を歌いました。一応楽譜は事前にプリントアウトしてお渡ししていましたが、実際の歌唱は全くのぶつけ本番でした。しかし舞台に上がってみるとこれが大成功になりまして、多くの職員の方にご好評をいただきました。
その先輩は翌年の1月、病気で急逝されました。たしか4日か5日の仕事始めだったと思いますが、私も含め、その一報を耳にしたすべての人がお互いに涙を流して取り乱す場面、後にも先にも無いと記憶しています。当時私は結婚披露宴を翌月に控えていました。もちろん先輩も参加される予定でしたから、そのキャンセルの作業であったり、ハネムーンと披露宴の間の期間に「お別れの会」があったり、私の中で記憶がセットになっているのです。
当時は事実を受け入れるのにも時間がかかりましたし、悲しみも深いものでした。しかし今の私にとって、この「セットの記憶」はマイナスなことではありません。先輩には音楽の会話の中で、これから家族を形成してゆく私に対してどうあるべきなのか、ご自身の経験をもとに多くのことを教えていただきました。5年以上が経った現在も、人生の様々な場面で役に立っているのです。
今先輩がご健在なら、この「起床音楽」についてどんな感想を話すだろうか? その想像は私にとってとてもポジティブなものなのです。今日の起床音楽を先輩と、先輩との大切な思い出に捧げたいと思います。